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後に巨額の請求が来ることがあるのです。壁材に塗り込まれたアスベストが人体に害を及ぼしたということで、巨額の賠償請求をされたわけです。それと自然災害です。
小島 現代社会になり、公害や天災など思いもよらないものが出てきてしまったということでしょうか。
有吉 そうですね。でも、立派な再建策ができたんです。損失を別の会社に分離し、ロイズの会員を個人だけではなく有限責任の法人会員制度を新設するなど資本を充実して再出発したわけです。
小島 ロイズに出資したのは、日本では安田火災さんがいちばん最初ですか。
有吉 ロイズは伝統ある組織で、ロイズが健全であることは、世界の保険業界にとり大変良いことなのです。そこで、ロイズの会長が日本に来られた時に、こちらから出資しますと申し入れたのです。後で聞いたのですが、東洋から出資を募るアイデアをもらったと喜んでおられたそうです。

 

海上保険は保険のハイテク

 

小島 海上保険は損害保険の起源だそうですが、どういったものがあるのですか。
有吉 大きく分けると、船舶保険と貨物保険があります。船舶保険は、船が座礁や沈没したときの船の引き上げ費用や修繕費、それから他の船舶やその積み荷に損害を与えた場合の賠償保険のセットです。また貨物物保険は、輸送中の貨物に対する事故を補償するものです。海上保険は保険の元祖祖と言いましたが、衝突した場合の船舶双方の損害の分担とか、積荷の損害の補償を船舶の賠償てするのか貨物保険で対象にするのかなど保険の根本理論がそこにあるのです。
小島 複雑ですね。
有吉 非常に複雑ですし、専門性が高い分野ですね。
小島 海外にいるお友達に何か送ってあける場合にも保険がかかっているのですか。
有吉 貨物保険で補償されていると思います。
小島 気がつかないところで、私たちは海上保険にお世話になっているわけですね。名画などを海外から持ってくるときも保険をかけますね。その金額は莫大なものでしょう。
有吉 時価で保険を付けますので、絵の値段が上がると保険料も上がりますね。
小島 飛行機で遊んでも、海上保険がかかっているのですか。
有吉 貨物運送保険をつけますが、これも海上保険の範疇に人ってますので海上保険がかかっていると言えます。飛行機で運ぶ場合も、自動車で運ぶ場合も、海上保険の貨物運送がべースになっているんです。
小島 保険料はどのように決まるのですか。
有吉 普通の物の値段は需要と供給で決まります。ところが、保険は事故率がどのくらいかで決まるんです。統計的に、事後的に、事故がどのくらい発生するかによって決められているんです。
小島 今までの実例から割り出す統計学なんですね。
有吉 そうです。海上保険は、過去の事故率の統計を見ながら保険料を算出します。過去の統計通りなら簡単ですが、その他輸送形態などいろいろな要素を加味して、危険度を測るリスク判断をやらなければいけないので、先を見越す日も併せてもっていなければいけないのです。
小島 現在、海上保険が占めるシェアは?
有吉 海上保険は四%くらいですかね。我々が入社した昭和三十年代は二五%近くあったんです。明治時代はもっと多かったと思います。
いま圧倒的に多いのは自動車保険で、大体五割を占めています。
今は他の分野が広がってきましたので、比率としては小さくなったということです。でも船舶の実質保有量は日本が世界一位です。私は海上の分野の人たちは世界を相手に仕事をするのですからプライドと誇りをもって仕事をして欲しいと思っています。

 

 

 

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